講演会「仙台定禅寺通りに学ぶまちづくり」開催レポート

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夏休み最後の土曜日となりました去る8月28日、今や仙台七夕祭りと比肩されるほど仙台を代表するイベントとなっています、「光のページェント」や「定禅寺ストリートJAZZフェスティバル」のキーパーソンである米竹 隆さんをお招きし、25年、20年と継続し、いまだに変化・成長を続けるイベントの仕組み、仕掛けの方法やイベントを超えたまちづくりに対するご見識を学ぶ機会を得ました。

 米竹さんは一見するところ、仙台を代表する目抜き通りで本屋さんを営んでいらっしゃる普通のおじさんのようにみえます。
 しかし今や、「光のページェント」や「定禅寺JAZZフェスティバル」またこれらの活動を通じて、東北一の繁華街を構成する老舗の店舗、名だたる企業、市役所の幹部、また現奥山市長との太いパイプを有する大立者です。
 ・・・しかし、そのお人柄は少しも偉ぶることなくざっくばらんで、集まって頂いたフロアーの方々に対しても、緊張感を解きほぐすさりげない心遣いと話術にすっかり引き込まれてしまいました。

 9月11.12日開催予定の「定禅寺JAZZフェスティバル」の準備を控えて超多忙な米竹さんがわざわざ日光に足を運んで下さったのは、岡井理事長が仙台でまちづくりの仕事をしていた時にお知り合いになられたご縁だとか。
 理事長は、日光青年会議所が毎年開催している「二社一寺のライトアップ」や当NPOのまちづくりの参考になるお話がうかがえるものと考え熱烈オファーをし、今回の開催となったそうです。


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△「他の地域で起きている様々なまちづくりに耳を傾けよう」と挨拶をする岡井理事長。

 米竹さんのお話として、イベントを継続する秘訣を要約すれば、ポイントは以下のように整理することができるかと思います。

・ダメ元の精神で無理をしない。無理強いはしない。
・市民手づくりを原則とすること。コアメンバーはブレてはいけないこと。
・市民の共感を力にする。その一方で、反対者の声に耳を傾けること。


(長編につき、続きを読むをクリックください)
●ダメ元の精神で無理をしない。無理強いはしない。

「光のページェント」も「定禅寺ストリートJAZZフェスティバル」ももともとは地元有志の茶飲み話から立ち上がったイベントだということです。何しろこれまでやったことのない取り組みでしたので、具体的な方法論もどんな課題があるのかも五里霧中の中で始まったとのことです。
まずはやれるところからやれる範囲で取り組もうという、半ばケ・セラセラの程よい力の抜き加減、いい塩梅が良かったのではないか、とのこと。「光のページェント」などは25年経った現在、億単位の事業に成長していますが、中心的に動いている人間は5~6人だとのこと。
 また意欲があって協力頂く上で留意しなくてはならないことは、お互いに疲れないこと、負担に感じないこと、だそうです。どこかに無理を抱えてしまえば長続きはしない、というのは至極納得できる話です。
 「程よい力の抜き加減」が最も難しいところで大変な示唆に富みますが、「いい塩梅」をさらりと口にできるところは、恐らく幾多の苦労を経験しての心境であろうと拝察します。米竹さんはまちづくりの達人です。

●市民手づくりを原則とすること。コアメンバーはブレてはいけないこと。

 イベントの開催や継続に最も頭を悩ませるのが、ありていにいえば「資金」の問題だそうです。企業の冠を付けてスポンサーシップを募ることは比較的容易だろうと想像できますが、商業主義や私利私欲が透けてみえたら、「市民の共感」は得られない。「市民の共感」を得られないイベントやまちづくりは意味をなさない。これは活動の大原則、大前提、と熱っぽっく主張されておられました。
 実行委員のコアメンバーはこうした活動の大原則や大前提を掲げたら、ブレてはいけないとのこと。いくら資金集めが辛くとも、企業の商業主義に染まったら根本がダメになるとのこと。
 市民参加の呼びかけとして「光のページェント」も「定禅寺ストリートJAZZフェスティバル」も街頭募金を行っています。米竹さんは日光での懇談会の翌日、早々に仙台に戻り、まだまだ続く猛暑(今年は本当に異常です。)の中で街頭募金活動のお手伝いをする、とおっしゃっていました。
 年々規模が大きくなるイベントの維持のためには、警備費等安全確保のための経費もまた大きくなり、かなりの部分はこの費用の捻出のため、イベント開催費用は増加する一方だそうです。このため市民の募金だけでは間に合わないのが実情で、仙台市や仙台商工会議所からの募金の他に、実は冠を出さない条件で企業からの寄付も募っているそうです。企業も市民の一員、との立場を貫き、企業の協力を得ることは容易なことではなかったのではないかと察せられます。
 お金に絡む話など言いにくいところも正直ベースでお話頂きました。
また、「市民の手づくり」というスローガンは、行政を動かす力がある、と実感されたそうです。車両通行止めや公園利用許可における行政、警察との通常は難航する交渉毎も、比較的スムーズに運ぶようだとのことでした。

●市民の共感を力にする。その一方で、反対者の声に耳を傾けること。

 「光のページェント」も「定禅寺ストリートJAZZフェスティバル」も、千人単位のボランティアが集まるそうです。また、「これらのイベントを立ち上げた功労者は私だ。」という声もたくさん聞こえてくるそうです。
米竹さんはこれらの現象を大いに歓迎していると言います。それは、市民ひとり一人がイベントを育てているのは自分であるという参加意識、主体性がある証拠であるそうです。
 いいかえればこれは、市民の共感を力にしているという事であると思います。
 また、米竹さんは100人賛同者がいれば、100人の反対者もいる、と言います。通行者の混雑で店舗の入り口が塞がれお客さんがお店に入れない、とか、これらのイベントが商売の売上につながらない、とか、夜の仕事で昼間寝ているのに音が響いてうるさい、とか、色々な意見や苦情が寄せられるようです。そうした市民の声にもきちんと耳を傾け、マンションに近い会場では午前中の演奏は控えるなどの対応を取っているそうです。こうした意見に真摯に向き合うことで一部は理解者になってくれる場合もありますが、音楽は趣味嗜好の問題なので、理解頂けない方々がいるのは仕方がないので、こうした状況もわきまえながら実施するしかなさそうです。


 米竹さんから一通り説明があった後、フロアーとの活発な意見交換がありました。

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△質問に答える米竹さん。「市民のお祭り」である事を強調されていらっしゃいました。

 
◎主な意見と米竹さんの回答は以下のようでした。

フロアーQ:イベントの赤字はどのように補填するのか。
米竹さんA:東北電力が電気代を軽減するなどして応援してくれたり、貯金がある場合はこれを充当することもあった。イベントは天候等に左右されやすく、中止の場合には経費が回収できない虞がある。JAZZフェスの場合には雨天決行であるが、楽器は雨に弱い。しかしそれでも自分達の責任で参加する、といってくれるバンドが大多数である。

フロアーQ:JC等関連団体との連携はどうしているのか。
米竹さんA:仙台JCは光のページェントで活動してもらっている。電飾や音響関係の専門学校と連携し、学生には実習として参加(ボランティア)してもらえるようにしている。

フロアーQ:イベントの開催の規模をどう考えているのか。
米竹さんA:JAZZフェスは当初参加バンドは25団体であった。今では、応募数が1,100団体に及ぶ。その中で、資金、時間、会場、警備費等の兼ね合いを考えると、約700団体の参加が限度である。気持ちとしては応募団体全数参加にしたいが、現実的には困難である。しかし、平成22年開催では初めて、仙台駅東側も会場の一部に充てることとした。拡大路線はこの取り組みが試金石になるであろう。

次に今回のテーマとなったイベントの概要を記します。
詳しくはホームページで確認することができます。


◆「SENDAI光のページェント」
開催年:1986年~(2010年で25回目)
実施期間:例年12月12日~31日
きっかけ:落葉したケヤキの電飾によって、冬場のにぎわいを創出しよう
運営費:1億2千万円程度。うち、募金800万円程度、市補助3,000万円程度
経費:電飾費用30万円/ケヤキ本×166本=約5,000万円
実行体制:実行委員60名程度、うちコアメンバー5~6人。ボランティア1,200人。
工夫したこと:
・効率よい電飾の飾り付けの方法
・電球の開発と2010年からはLEDによる省電力化
・警察協議につき色つき、点滅はダメ
・スターライト・ウインク(一斉消灯一斉点灯を日に3回開催)

実績:60万球(当初30万球。最高100万球)。期間中約280万人の人出。
公式HP:http://www.sendaihikape.jp/

◆「定禅寺ストリートJAZZフェスティバル」
開催年:1991年~(2010年で20回目)
実施期間:例年9月第2土日
きっかけ:秋におけるイベントの創出(春:青葉まつり、夏:七夕、冬:光のページェント)
運営費:5,000万円程度。うち、募金800万円程度、市補助200万円程度、市商工会議所数万円
経費:ピアノ等楽器レンタル費、音響施設費、循環バスのレンタル費、警備費。
実行体制:実行委員60名程度、うちコアメンバー5~6人。ボランティア約1,000人
工夫したこと:
・名前はJAZZフェスではあるが、ジャズの本来の意味合いである「新しい音楽」の意を汲み、和楽器もあるなどジャンルは問わない。
・資金集めの方法(参加者からの運営協賛金、ビールの委託販売、フィルムケースを利用した手づくり楽器の販売、オリジナルTシャツの販売、キリンビールの委託販売など
・期間中、スタッフの飲酒の禁止
実績
・応募1,100団体(うち選定700団体)。参加者約5,000人。来訪者は2日間で約74万人。

公式HP:http://www.j-streetjazz.com/

さて、どちらのイベントもこれからの開催となります。
皆様、実際に足を運んで体験しましょう!

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